故・桂枝雀さんのレパートリーに「雨乞い源兵衛」という落語があります.
落語作家の小佐田定男さんの作でお二人にとっても比較的早い時期の作品だったと思います.
わたしが初めて見た(聞いた)のは30年ほども前だったでしょうか.
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記録的な干ばつにみまわれたある村で,源兵衛のもとをお庄屋さんが訪ねてきます.
村の古文書によると,源兵衛の祖先はかつて雨乞いで村の危機を救ったことがあり,その秘術は子孫に伝えられている,のだそうで...
お庄屋さんに脅されすかされ雨乞いをするはめになった源兵衛ですが,雨乞いの方法なんて聞いたこともありません.
ところがどういう加減か,偶然大雨が降り出して,源兵衛は一躍村のヒーローに...
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というお話しなのですが,その中に「うさぎ川」という川が登場します.
「たろぉさくぅ」
「なんじゃ,じろさくぅ」
「雨がふらんのう」「ちっともふらんのぉ」
「うさぎ川の水も干上がってしもうたわい」「干上がってしもうたのぉ」
という一節なのですが,なんともおとぎ話風の村の雰囲気にぴったりだと,今も記憶に残る川の名前です.
その「うさぎ川」を往診の途中に見つけました.
「干上がる」ほどもない,排水路にも近いような川ですが,実はこの場所は枝雀さんが住んでおられた所にほど近いのです.
もともとの脚本のなかにあったものなのか,枝雀さんのお考えでそうなったのか,私には知るべくもありませんが,大好きな枝雀さんがこのあたりを散歩しながらネタくりをしておられたのかなぁ,と郷愁の念とともにカメラをとりだしました.